勇気、希望、あきらめない         相部美由紀

 2008年11月、卵巣がんと診断されて、手術と術後の抗がん剤治療を受けました、病気になる前は、病院で小児科医として働いておりました。順調に回復し、職場復帰も果たして、たくさんの宝物を与えてくれたがんに感謝して毎日を過ごしておりました。そんな中、2010年の正月気分もまだ抜けきらないうちに、定期検査でまさかの再発がわかり「私って死ぬんだ」とあわてました。
 その時、親友から「生きてこれがしたいというものを持っている人は強い、それを自分で見つけてみたら」と言われました。患者同志での交流、そしてそこで何か小さなことでも自分にできる活動を始めることが、生きがいになるかもしれないとの思いで、青葉の会に入会しました。
 松尾倶子代表にお電話し、抱え切れない不安、入院待ちの辛さなどを聞いていただきました。共感していただけたうれしさで涙があふれ、おかげでその後はすっきりして、再発を前向きに受け止めるきっかけを得ることができました。
 1月17日の九州医療システム研究機構主催の樋口強氏の「新春講演と落語の会」に誘っていただき、著書やホームページを拝見して以前からファンだった私は、期待でワクワクしました。当日の会場は、爆笑の連続でどよめいており、氏のお話は毎日の生活にささやかな喜びを見つけ、心豊かに生きていくヒントに満ちあふれていました。肺小細胞がんを13年余り生き抜いてこられ、前人未到の道を自らの手で切り拓いてこられた、樋口氏だからこその説得力でした。
 会終了後、松尾代表に連れられて、舞台裏にお邪魔しました。樋口氏はご親切にも、サイン入りのご著書に私の名前を入れて下さいました。樋口氏と松尾代表を乗せたタクシーを見送りつつ、私の心は感謝感激の思いでいっぱいでした。すると不意にタクシーが停車しました。なんと松尾代表から樋口氏を囲んでの夕食へのお誘いでした。入院中で外出許可を得て講演会に来ていた私は、一瞬迷いましたが、こんな絶好の機会はないので、お言葉に甘えてタクシーに飛び乗りました。何よりも、松尾代表の勇敢さ、広い慈愛に満ちたお心にはただただ感服するばかりです。
 夕食会では、勇気・希望、あきらめないこと、これからの青葉の会の楽しい行事への期待など、いっぱいの贈り物をいただきました。もちろん、大半の時間は笑っていましたので、免疫力が大幅にアップして、かなりのがん細胞が死滅したことは間違いありません。
 結局、大遅刻で病棟へ。看護師さんたちにはずいぶんご心配をかけましたが、笑いながら暖かく迎え入れて下さいました。外出前はうつむきかげんで廊下を歩いていた患者が、外出後は胸を張って大股で歩いて快活に笑うようになったのを誰よりも喜んで下さったのは、看護師さんたちでした。
平成22年1月入会(宗像市在住)